ちょっとしたヒント
- 吐く息を、いちばん長い数にしましょう。
- ベッドに入りながら4回やってみて。
- 苦しければ、止める時間を短く。
夜も更けたころ。明かりを消して、一日がやっと終わって、体はくたくた。でも心にはその知らせが届いていません。明日のやることリストを走らせ、さっきの会話を何度も思い返し、朝まで送らないメールを頭の中で書き直している。じっと横になっているのに、目は冴えわたったまま。
疲れた体と、興奮したままの心。その隙間こそ、4-7-8呼吸法が力を発揮する場所です。数え方はとてもシンプル。4つで吸い、7つ止めて、8つで吐く。はじめは数字がやけに細かく見えるかもしれません。でもそれぞれにちゃんと役目があって、その大半は最後の、長くゆっくりとした吐く息にこめられています。
この方法を広めたのは、医師のDr. Andrew Weilです。ヨガから生まれた呼吸の練習、プラーナーヤーマを応用したものでした。彼はこれを「神経系のための自然な鎮静剤」と呼びます。その意味は、響きほど神秘的ではありません。あなたが手で操れる、ストレス反応のたったひとつの部分を使っている、というだけのことなのです。
長く吐くと、なぜ落ち着くのか
あなたの体には、相反する二つのしくみがあります。ひとつは、行動に備えてあなたを加速させるもの。もうひとつは、休んで、消化して、回復するためにあなたを減速させるもの。この二つは絶えず入れ替わっていて、あなたの呼吸はその両方とつながっています。
ここからが役に立つところ。息を吸うと、心拍は少しだけ上がります。息を吐くと、また下がっていきます。つまり、吐く息はもともとこのサイクルの「落ち着く側」の半分で、長く吐くほどその落ち着く側に強く寄りかかることになります。吐く息をこのリズムの中でいちばん長い数にすることで、4-7-8は体の「休んで静まる」ギアのほうへ天秤を傾けるのです。
ゆっくりした呼吸そのものには、しっかりとした裏づけがあります。*Frontiers in Human Neuroscience*に載った系統的レビューは15の研究を集め、ゆっくり、つまり1分間におよそ10回より少ない呼吸をすると、心拍変動が確かに高まり、心地よさやリラックスが増し、不安や緊張の症状が減ることと結びついていた、と報告しています。こうしたことを自分で測る必要はありません。大事なのは、あなたが本物の、体に届く信号を送っているということ。落ち着く考えを自分に言い聞かせているだけではないのです。
4-7-8がしてくれることはもうひとつあります。心に小さな仕事を与えてくれるのです。4つ、7つ、8つと数えるのは、ちょうどよく注意を使うので、心配のループに残される余白が少なくなります。そのリズムが、ぐるぐる回る渦のかわりに、つかまっていられる手すりになってくれるのです。
やり方
もとの方法には、つい飛ばしてしまいがちだけれど大切にしたい、ちょっとした細かい点がいくつかあります。
舌の先を、上の前歯のすぐ後ろにある組織のふくらみに当てて、ずっとそこに置いておきます。舌のまわりから、少しすぼめた唇を通して吐くことになります。これが、吐く息にあのやわらかな「フーッ」という音を生むのです。
吸う息は、静かに、鼻から。低いところへ向けて、胸より先におなかがふくらむようにします。ストレスを抱えていると、人は胸の上のほうで浅く高く呼吸しがちで、それが警報を鳴らしつづけさせます。おなかへ向かうゆっくりした鼻呼吸は、その逆の信号です。できるだけたくさん空気をのみ込もうとしなくていい。やさしく、ゆったりと満ちる一息で十分です。
- まず、息をぜんぶ吐き切ります。口から「フーッ」とやさしく完全に吐いて、空っぽのところから始めます。
- 口を閉じ、鼻から静かに、4つ数えながら吸います。
- 7つ数えながら息を止めます。
- 8つ数えながら口から吐き、あのやわらかな「フーッ」を出します。
- これで一呼吸。あと3回くりかえして、合わせて4呼吸です。
これで全部です。Weilのすすめでは、始めたばかりのうちは一度に4呼吸までにして、リズムに慣れるよう1日2回練習すること。1か月ほどたって気に入ったら、続けて8呼吸まで増やしてもかまいません。Cleveland Clinicも似たリズムを提案しています。数サイクルを1日に2回ほど、できればベッドに入るなど、すでにやっていることに結びつけて。
ひとつ気にしなくていいこと。時間を完璧に計ることです。正確な秒数より、比率のほうが大事です。4つで吸ったあと、止めるところで息が苦しくなるなら、数えるのが長すぎます。全部を少し速くして、4-7-8の形を保ちましょう。それでも吐く息がいちばん長い部分であるように。
どんなときに効きやすいか
長く止めて、長く吐く。このつくりが、これを強い「鎮め役」にしています。だからこそ、これほど多くの人が眠る前にこれに手をのばすのです。さわがしくて、どこにでもある日常の場面でも役立ちます。少しトーンを落としたいのに、その場を離れられないとき。むずかしい電話の前。悪い知らせが届いた直後の数分間。いらだちがこみ上げてきて、頭に最初に浮かんだことを口にしたくないとき。
たいていの呼吸法と同じで、なじんでいるほどよく効きます。試すのがパニックの真っ最中だけなら、ぎこちなく感じて、たぶん投げ出してしまうでしょう。落ち着いているときに、1日に2回ほど練習しておくと、体が覚えているものになります。そうすれば、本当に必要なときにそこにいてくれるのです。
しっくりこなければ、ゆるめて
7つの「止める」が、人をつまずかせる部分です。これはきちんと言っておく価値があります。息を止めるのは、けっこうこたえることがあります。とくに、すでに不安だったり、息苦しかったりするときは。止めることで体がこわばったりパニックになったりするなら、短くしましょう。3つや4つに減らすか、止めるのをまるごと飛ばして、ただゆっくり吸って、もっとゆっくり吐くだけにします。長く吐くことだけでも、本当に効く部分の大半をこなしてくれます。
ふらついたり、めまいがしたりするなら、たぶん強すぎるか速すぎる呼吸になっています。やめて、呼吸がふだんに戻るのを待ち、しばらく座ったままでいてください。無理に押し通しても、ごほうびはありません。
ごく一部の人は、呼吸にじっと意識を向けると、かえって不安が下がるどころか上がってしまうことに気づきます。これは起こることで、しばしば、ある種のストレスやトラウマのあとに起こります。そして、呼吸法に失敗したという意味ではありません。この特定の道具が、あなたの道具ではない、というだけのこと。それでいいのです。五感をたどってのグラウンディングや、やさしい体の動きのほうが合うかもしれません。セラピストが、あなたに合うものを見つける手助けをしてくれます。
できること、できないこと
4-7-8呼吸法は、その場の音量を下げる方法であり、夜に気持ちをほどく方法です。お金もかからず、静かで、どこででもできます。ただでできるものとしては、たいしたものです。
これは不安症の治療ではありませんし、何週間も居すわった不眠を直すものでもありません。ほとんどの夜を眠れずに過ごしているとか、ストレスがじわじわとあなたの毎日や人間関係や、ふつうに過ごす力をむしばんでいるなら、それは医師やセラピストに相談する合図です。もっと助けを求めることは、呼吸があなたを見放したという意味ではありません。ひとつの呼吸では抱えきれないほど大きなものもあります。あなたには、いま本当に背負っているものに見合った支えを受ける資格があるのです。
出典
- Cleveland Clinic, How To Do the 4-7-8 Breathing Exercise
- Andrew Weil, M.D., Breathing Exercises: Three To Try (4-7-8 Breath)
- Frontiers in Human Neuroscience, How Breath-Control Can Change Your Life: A Systematic Review on Psycho-Physiological Correlates of Slow Breathing
- Harvard Health, Relaxation techniques: Breath control helps quell errant stress response