ちょっとしたヒント
- 毎月おなじ日に。カレンダーに入れて、終わりの時刻もつけて。
- おなじ六つの数字を、おなじ順番で書く。
- 変えることを一つだけ持って帰る。仕組み一式ではなく。
あなたは自分の仕事が得意で、それに見合う額をこれからもっと受け取るつもりでいます。四つのチームをまたぐ案件を、何ひとつ落とさずに運べる。むずかしい話も、声を揺らさずにできる。自分の暮らしにいくらかかってほしいのかも、わりとはっきり見えている。それなのに銀行アプリだけは、まったく開かないか、一日に九回開くかのどちらかで、頭の中にはだいたいの数字があるのに、まちがっていたら困るので声には出したくない。
その差は、性格の欠点ではありません。予定が一つ抜けているだけです。野心のある暮らしの中で、お金だけは、力のある人でも決まった見直しをせずに回してしまう場所です。だから、いちばん条件の悪いところで扱われることになります。夜おそく、記憶だけを頼りに、何かへの反応として。マネーアワーが直すのは数字ではなく条件のほうで、あなたから何かを奪っていたのは、その条件でした。
マネーアワーでは、実際に何をするのか
毎月おなじ日にすわって、持っている口座をぜんぶ開いて、六つの数字を決まった順番で一枚の紙に書きます。それから短い質問に四つ答えて、変えることをちょうど一つだけ決めて席を立ちます。
これで全部です。わざと退屈にしてあって、その退屈さこそが取り柄です。順番が決して変わらないので、今月の紙は先月の紙と十秒ほどで見くらべられます。計算はいっさいいりません。表計算ソフトがやるはずだった仕事を、並んだ数字の流れがやってくれます。終わりの時刻が決まっているので、日曜まるごとに広がって、二度とやりたくなくなる、ということも起きません。
KEEP CALM の創業者は、その形をはっきり言います。彼は一生かけて走りつづけ、たくさんのものを望み、そのあいだ落ち着いていられる方法を見つけてきました。自分の数字と向き合う定例の予定も、その方法の一つでした。月に一時間は、小さくした人生ではありません。残りの七百十九時間、お金のことを考えなくていい権利を買い戻すのが、その一時間です。そうして空いた注意は、あなたが本当に作っているものへまっすぐ流れていきます。
どの六つの数字を書けばいい?
手元のお金、あなたが返すお金、あなたに返ってくるお金、今月の固定費、今月の自由なお金、そしてクッション。毎回おなじ六つを、おなじ順番で書きます。見くらべることがすべてであり、見くらべは、並びが動かないときにしか成り立たないからです。
- 手元のお金。 今日使えるお金を、すべての口座で合計したもの。
- あなたが返すお金。 カード、ローン、六月に友だちが立て替えてくれたもの。合計を一つ。
- あなたに返ってくるお金。 まだ精算されていない立て替え、送ってある請求、誰かが預かっている保証金。
- 今月の固定費。 住まい、光熱費、保険、サブスク、交通費、そしてどの月でも買う食べもの。
- 今月の自由なお金。 固定費を引いて残るぶん。ほとんどの人が、一度も出したことのない数字です。
- クッション。 よけてあって、使わないお金。上のどれとも動き方がちがうので、自分の行をもらいます。
一枚に六行。スマホのメモでも足ります。ノートの罫線のあるページなら、もっといい。先月のページと並べて持てる一枚は、開かない表計算ファイル十個ぶんの値打ちがあります。
自分のお金の一時間に、人に与えることがどう関わるのか
六つの下に七行目を引いて、こう書きます。今月わたしが助けた人。ここには、金額と同じくらい気楽に名前が入ります。誰かをつないだことと、講座の代金を出したことは、この一時間にとっては同じ一行だからです。
その行がページに載る理由は、道徳ではなく仕組みの話です。人が年に十二回書きとめるものが、その人になっていきます。月に一度は目を通さないといけない行は、残りの二十九日に何が目に入るかを、静かに変えます。それがこの仕掛けのすべてです。KEEP CALM の創業者は、返すことを自分の成功の秘密の一つに挙げています。着いてから始めたのではなく、のぼる道のりのあいだずっとやってきた、と言います。まわりの人を教え、育て、助言し、引き上げ、ほめ、後押しできる機会を、いつも探していた。そして返ってきたエネルギーと支えは十倍だった、と彼は言います。これは法則ではなく、彼が自分の二十年について語っていることです。正直な当事者の話に見合うだけの値打ちが、そこにあります。
この行を使えるものに保つ決まりが二つあります。まず、ほとんどの記入はお金ではありません。そもそもお金である必要がないのです。本人のいない部屋で出した名前、あなたが実際にお金をもらっている技能の一時間、ほかの誰も言わないときに若い同僚に伝えた金額。もう一つ、空っぽの月は、ただの空っぽの月であって、失敗ではありません。あなたを責めてくるページは、いずれ書かなくなるページです。そうなると、ほかの六つの数字まで失うことになります。
沼にはまらずに、一時間で終えるには
カレンダーには、始まりの時刻だけでなく終わりの時刻も入れます。そして五分より長くかかりそうなことは、今やらずに書きとめておきます。この一時間は、見るためと、一つ変えるためのものです。仕組みを作り直すための時間ではありません。
崩れない進め方はこうです。
- 二分。立ち上がって、長く息を吐いて、それから何かを開く。
- 十五分。六つの数字を、順番どおりに書く。
- 十五分。先月のページを、今月の横に。何が動いて、どれだけ動いたか。
- 十五分。四つの質問。
- 十分。変えることを一つ、日付の入った一文にして書く。
四つの質問も決まっています。この一時間が気分ではなく決定を生むのは、この質問があるからです。先月から何が変わった? 買ったもののうち、また買うものはどれ? 来月までに、どの一つの数字を変えたい? それを動かす、いちばん小さなことは何?
変えるのは一つ。五つではありません。本当に解約したままになるサブスク一つのほうが、十四日までしかもたない新しい仕組み一式に勝ちます。
思っていたより数字が悪かったら?
それでも書いて、一時間を最後までやります。書きとめた数字は、手をつけられる数字です。避けている数字は暗いところでふくらんで、あなたの注意までいっしょに持っていきます。
その「避ける」がふつうのことで、あなた個人の問題ではないと知っておくと楽になります。Journal of Economic Literature で情報回避の研究をまとめた経済学者たちは、人がその情報を断ることをふつうにやると報告しています。役に立って、無料で、戦略上の不利もないときでさえです。理由はただ一つ、その情報がどう感じられそうか、それだけでした。これは、ふしぎと気が楽になる話です。あなたが特別にお金に弱いのではありません。判定をたずさえて来そうな数字に対して、ほとんど誰もがやっていることを、あなたもやっているだけです。
だから、そこから判定を抜いてしまいます。六つの数字は計器であって、成績表ではありません。燃料計が今いる位置を示すのと同じで、六つの数字も今の位置を示しているだけです。位置なら、木曜までに変えられます。
月に一時間が、残りの七百十九時間を買い戻す
これをやる理由は、きちんとさせるためではありません。余力のためです。自分の六つの数字を知っている人は、落ち着いた声で交渉できます。示された条件が自分にとって実際に何を意味するか、わかっているからです。クッションを五年ものあいだ手つかずで置いておけます。目に見えているからです。取る価値のあるリスクは取り、そうでないものは断る。それを、一週間もやもやする前に、すばやくできます。そういう速さは、たった一つの良い判断ではとても届かないやり方で、仕事人生ぜんたいに積み上がっていきます。
習慣は、変わらない状況のくり返しでできていきます。ここで働いているのは、あなたの意志の力よりもカレンダーの予定のほうだ、という当たり前の話です。だから、日を決めてください。終わりの時刻もつけてください。六つの数字と、一つの名前を書いて、あなたが本当に大事にしているものを作る仕事に戻ってください。
出典
- British Journal of General Practice, Making health habitual: the psychology of 'habit-formation' and general practice
- Consumer Financial Protection Bureau, Find out your financial well-being
- American Economic Association, Journal of Economic Literature, Information Avoidance