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PERFORMANCE · 本番の場で

頭が真っ白になった瞬間の、三秒の立て直し

場数を踏んだ人でも頭は真っ白になります。そして使うのは、同じ三秒の立て直しです。文をそこで止める、ひと呼吸、最後にはっきり言えた要点をもう一度声に出す、そして続ける。会場は間を許してくれます。かわりに目についてしまうのは、慌てて突っ走るほうです。

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あたたかい照明のステージで、女性がマイクに向かって話しています。

Atul Pandey による写真(Unsplash)

話しはじめて10分。ここまでは順調です。会場はあなたと一緒にいて、話もちゃんと届いている。そして次の言葉に手を伸ばした瞬間、そこには何もない。言いかけた文に、続きがありません。400回は弾いてきた小節に、次の音が出てこない。小さくて、とてつもなく大きな沈黙。会場じゅうの顔は、まだ全部あなたのほうを向いています。

誰も教えてくれないことがあります。これは、人前に立ち続けている人なら誰にでも起きます。あなたが「この場でいちばんうまい人」と名前を挙げるような人たちにも、です。コンサートのソリストも頭が真っ白になります。いちばん経験のあるパートナーだって数字を忘れます。違いはひとつだけ。彼らには、次の三秒でやることが決まっている。しかもそれは、いつも同じひとつのことなのです。

この立て直し方は、今日おぼえられるくらい短くて、どんな場面でも使えます。基調講演でも、口頭試問でも、オーディションでも、結婚式のスピーチでも、はじめてのピッチでも。

プレゼンの途中で頭が真っ白になったら、どうすればいい?

文をそこで止める。いつもの速さで、ひと呼吸。最後にはっきり言えた要点を、もう一度声に出す。そこから続ける。立て直しはこれだけです。かかる時間はおよそ三秒。うまくいくのは、あなたが最後にはっきり言えた要点が、まだこの部屋に残っているからです。それをもう一度言えば、さっきまで走っていた線路の上に、そのまま戻れます。

途中で折れた文を、無理に終わらせないでください。着地できない文は、ただの埋め草になります。そして会場が本当に「慌てている」と受け取るのは、その埋め草のほうなのです。文の途中でもかまいません、きれいに止めてしまいましょう。ふいに止まる感じは、その人が自分で「ここで間をとろう」と決めたように見えます。それは話す人がふつうにやることです。

言い訳もしないこと。「すみません、完全に話が飛んでしまいました」と言えば、会場の注意を失って、返ってくるものは何もありません。みんなが見るのが中身ではなく、あなたの立て直しのほうになってしまうからです。あなたがどこへ向かっていたかを知っている人は、客席にほとんどいません。知っているのはあなただけ。つまり、何かが抜け落ちたと気づけるのも、あなただけなのです。

なぜ、押し通すより間をとるほうがよく見えるのか

間というのは、自信のある話し手がわざと使うものだからです。慌てて突っ走るのは、そうではありません。あなたの沈黙がやむを得ないものだったかどうか、会場には知りようがない。けれど、速くなっていくテンポ、細くなっていく声、途中で切れた言葉は、いちばん後ろの席にもちゃんと届いてしまいます。

ばれるのはテンポです。話の中身は、聞き手がいちいち考えて評価しなければならないもの。でも速さは、考えなくてもその場で読み取れる合図です。空白のあいだも、いつものリズムを保ってください。そうすれば、その空白は強調に変わります。逆に速度を上げれば、何かおかしいと会場に伝えたことになります。それは相手が持っていなかった情報で、いちど聞いたら、もう聞かなかったことにはできません。

急ぐより呼吸をしたほうがいい理由は、体のしくみのほうにもあります。頭が真っ白になったその瞬間、上から緊張の波がかぶさってきて、まず最初に呼吸を浅く、上のほうへ引き上げてしまう。ふだんの深さのひと呼吸を、意識して入れる。それだけで必要な二秒が手に入り、次の一文で声が細くならずにすみます。

三秒は、内側からはとても長く感じられて、外側からは何でもありません。一度ストップウォッチで測ってみてください。それだけで、こわくなくなります。

戻るときは、どんな一文を使えばいい?

戻るための一文は、前もって自分の言葉で書いて、持ち歩いてください。たとえば「ここからお持ち帰りいただきたいのは……」とか、「大事なところを、もう一度言いますね」とか、あるいはただ「では、さっきの数字に戻ります」でもかまいません。

前もって決めておく理由は、その場では思いつけないからです。一文が必要になるちょうどその瞬間は、一文を組み立てる力がなくなっている瞬間でもある。だから正直な作戦は、すでに作ってあるものを持っておくことです。自分が実際に口にする言葉を選んでください。誰かの台本みたいな言い回しは、緊張しているときには出てきません。

一文で足ります。二文になると、それは頭が真っ白になった話をするスピーチです。短く、前を向いた言い方で、最後は自分ではなく中身を指して終わるようにしてください。

そうしたら、実際に手で触れる場所に置いておきましょう。メモのいちばん上、名札の裏に忍ばせた小さなカード、楽譜フォルダの内側。そのカードが支えるのは、たった一行でいい。その場では組み立てられなかったけれど、読むことなら確実にできる一文です。

いちばんよく知っているところで、なぜ頭が真っ白になるのか

いちばんよく知っているところは、いちばん自動で流れているところだからです。そして緊張すると、人はその自動で動いていた技術を、わざわざ手動で操縦しはじめます。ひとりでうまく回っていた動きや一節を、意識がハンドルを握った瞬間に、全体が遅く、雑になってしまうのです。

研究にもはっきり表れています。賞金のかかった競技ラウンドの最中に、ゴルファーたちが考えていることを声に出すよう求められ、しかもスコアはあとでグループ全員の前で読み上げられると分かっていたとき、技術の高い選手ほど、練習のときよりずっと多くの技術的なルールを口にするようになりました。とくにパッティングのあいだが顕著で、その傾向は、こうした自己観察に走りやすい選手でいちばん強く出ました。彼らの腕が一晩で落ちたわけではありません。彼らの注意が、その腕の内側に入り込んでしまっただけなのです。

ここで正直な補足をひとつ。この話の広まり方は、少し単純すぎるからです。スポーツ心理学の研究者たちは、自分に注意を向けることが必ず悪いわけではない、大事なのは何にどう注意を向けるかだ、と指摘してきました。結果に向ける注意、客席に向ける注意、すでに自動で動いているものの仕組みに向ける注意は、高くつきます。次にやろうとしていること、次のフレーズ、次の要点、狙っている的に向ける注意は、安上がりで、たいていは助けになります。

だからこの立て直しは効くのです。最後にはっきり言えた要点をもう一度言うことで、注意はもう一度、外側の中身へ向きます。そこは、注意があなたから何も取り立てない、ただひとつの場所です。

次はこうならないために、何をしておけばいい?

中身だけでなく、立て直しのほうも練習しておきましょう。通し練習のたびに一回、わざと文の途中で自分を止めて、呼吸して、用意した一文を言って、続ける。三回か四回もやれば、それは事件ではなくなって、ただの手順になります。

たいていの人は、すべてがうまくいくパターンしか練習しません。だから、本当にこわがっているただひとつの場面に対して、何の準備もないままになります。失敗のほうを練習することが、そこから怖さを抜いてくれます。こわかったのは、忘れることそのものではなかったからです。そのあと何が起きるのか分からない、そちらがこわかったのです。

ついでに、難しいところも単独で練習しておきましょう。本番の速さで、声に出して、いつもなんとなく通り過ぎてしまう箇所から始めるのです。あなたの頭が真っ白になる場所は、たいてい、そこだけを取り出して練習したことが一度もない場所です。

目の前の誰かが真っ白になったとき

この場面は、自分が舞台に立つときよりも、客席から見ることのほうがずっと多いはずです。そして、こちらは何も減らないのに、相手にはとてつもなく大きく届く。そういうことが四つあります。

顔をやわらかく開いたまま、その人を見ていてください。スマホに目を落とさない。となりの同僚と目を見交わさない。気の毒そうに顔をしかめるのも、やめておきましょう。まずい瞬間に味方の顔を探している人が探しているのは、たったひとつのことです。それを差し出す人になるのは、本当の意味での手助けです。

文を代わりに言い終えて助けようとしないこと。助けに見えて、届くのは判定です。この人はひとりではたどり着けなかった、と会場に伝えてしまうからです。三秒を渡してください。ほぼ確実に、その人には戻り道があります。

そして終わったあとに、立て直せていたことを声に出して伝えてください。「すごくよかったよ」ではありません、それは信じてもらえません。伝えるのは具体的なほうです。「10分あたりで一回言葉が飛んでたよね、でもどこで戻ったのか、全然分からなかった」。自分がうまく切り抜けられたことを、ほとんどの人は一生知らないままです。誰も教えてくれないからです。そして教えてもらえたかどうかで、その人が次の本番へ入っていく足取りが変わります。もしその人にとって意見が大切な相手がそばにいるなら、その人に聞こえるところで言ってあげてください。あなたが差し出すのは、一文だけです。

これはそれ自体でやる価値のあることですが、返ってくるものもあります。誰かが真っ白なところから戻ってくるのを見ることは、会場はこれを許してくれるのだと学ぶための、いちばん安い方法です。そしてその確信こそが、いつかそれが自分の身に起きた日に、あなたの手を落ち着かせてくれます。

出典

  1. National Library of Medicine, The fourth dimension: A motoric perspective on the anxiety-performance relationship
  2. National Library of Medicine, Evidence for Skill Level Differences in the Thought Processes of Golfers During High and Low Pressure Situations
  3. National Library of Medicine, Music Performance Anxiety: Can Expressive Writing Intervention Help?

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