彼は一月に、自分の一年分のカレンダーを紙に印刷しました。ずいぶん変わったことをするものですが、やってみる価値はありました。仕事の側は完璧でした。どの予定にもタイトルがあり、部屋が押さえてあり、参加者の名前が並び、資料が添えられている。しかも一年を通して、ほとんど動かされていません。もう半分は、鉛筆書きでした。友人との食事、父の通院、同じ火曜の夜に三度立てられた予定、二度延期されたあと、いつのまにか出てこなくなった旅行。
彼は働きすぎていたわけではありません。仕事が好きで、腕もよく、この先十年もアクセルの踏み具合を変えるつもりはありませんでした。一枚の紙の上に見えていたのは、それよりずっと狭くて、ずっと直しやすい問題でした。キャリアには、カレンダーがあり、振り返りの周期があり、計画がある。その裏側にある人生には、その三つがどれもない。だからこそ、ぶつかるたびに、いつも負けてきたのです。
なぜ、個人的な予定から先に消えていくのか
それを守らせてくれる相手が、ほかに誰もいないからです。仕事の会議には四人の参加者がいて、資料があり、決めるべきことがあり、動かせば目に見える影響が出ます。ランニングには、あなたしかいません。
これは価値観の問題ではなく、仕組みの問題です。そしてそれは、いい知らせです。仕組みの問題には、仕組みで打てる手があるからですから。四半期の業績レビューのほうが自分の膝より大事だ、なんて座って決める人はいません。ただ、予定がぶつかったのを受け入れるだけ。そして、待っている人がいる予定は、誰も待っていない予定に必ず勝ちます。午後三時に招待が届く、そのたびに。
だから、気合いで直そうとするのはもうやめましょう。気合いはすでに使い切っているし、それは仕組みに負けています。人生のもう半分にも、キャリアの側がとっくに持っている三つを渡してあげてください。カレンダーの枠、名前のついた相手、そして振り返りです。
個人の予定を仕事のカレンダーに入れても、白々しくならないようにするには
同じカレンダー、同じルール、動かすときの猶予も同じ。個人用のリストを別に作ると、それは願いごとのリストになります。願いごとのリストは、カレンダーとぶつかれば必ず負けます。そもそも勝負の場に立っていないからです。
具体的には、カレンダーはひとつ。二つに分けない。タイトルは「ブロック」ではなく、ちゃんとした名前で。「夜のどこか」ではなく、はじまりの時刻をはっきり書く。仕事のカレンダーが同僚に見えているなら、中身まで説明する義理はどこにもありません。「18:00から19:30まで対応できません」は、それだけで完成したひとつの文です。同僚は、目に見える空白よりも、この一文のほうをずっと確実に尊重してくれます。
研究の裏づけは、めずらしいほどはっきりしています。International Journal of Environmental Research and Public Healthに載った系統的レビューとメタ分析は、計画介入、つまり「いつ、どこで」行動するかを具体的に決めさせるやり方が、一般の人を対象とした試験で身体活動を確かに増やしたと報告しています。前もって決めることは、その場で決めることに勝つ。しかもその差は、何十年にもわたって何度も再現されてきました。「木曜18時、ジム、Marcusと」と書く。介入と呼べるものは、それで全部です。
本当にどうしても外せない予定がぶつかったら
動かします。ただし、ぶつかった予定を受ける前に、同じ週の中の、名前のついた枠へ動かします。ルールは「絶対に動かさない」ではありません。「絶対に消さない」です。
忙しい仕事のなかでこのやり方が生き延びられるかどうかは、この一点にかかっています。そしてこれが、この記事が「夜の時間を仕事から守る話」ではない理由でもあります。本当の緊急事態はあるし、あなたはこれからもそれを引き受けるでしょう。受け入れられないのは、個人の予定がカレンダーからただ消えて、どこにも現れ直さない、という形のほうです。だから順番はこうなります。ぶつかった予定を受ける、もう一方を実際の枠へドラッグする、それから「はい」と返信する。余計にかかるのは二秒。それだけで、その予定は生き延びます。
上限も決めておきましょう。ある予定がすでに三回動いているなら、必要なのはさらなる自制心ではなく、別の時間帯です。仕事が欲しがらない時間へ移してください。多くの人にとって、それは早朝です。そして毎週交渉するのを、そこでやめる。
いちばん先に守るべき予定はどれか
たいていの場合、体を動かす時間です。まっさきに動かされるのがこれで、しかも、負けつづけている相手であるキャリアに、いちばん素直に返ってくるのもこれだからです。
KEEP CALMの創業者、Kaʻohele Carlosは、キャリアを築くプレッシャーを、その最中に体を鍛えることで乗りこえてきました。これがウェルネスの棚ではなく「目的」の記事に入るのは、そういう正直な理由からです。体は、長い野心を走らせるための機材です。世界保健機関が大人にすすめているのは、週に150分以上の中くらいの強さの運動。168時間のうちの2時間半です。お願いはそれだけ。
どうしても難しい週のための、ちょっとした裏技もあります。Katherine Milkmanたちは、Management Science誌で「誘惑の抱き合わせ(temptation bundling)」と名づけた実験を報告しました。ジムに通う人たちが、続きが気になってたまらないオーディオブックを、ジムにいるあいだだけ聴けるようにしたのです。通う回数は、増えました。守りたい一時間を、本当に欲しくて、それ以外の場面では自分に許していない何かと抱き合わせにする。すると、その一時間に意志の力が要らなくなります。そこが肝心なところです。意志の力は、あなたの仕事がすでに使っている資源なのですから。
個人の予定に「名前」をつけるには
もうひとりを、そこに入れることです。誰かが自分を待ってくれている予定には、ひとりきりの予定が決して持てない強制力が働きます。それは、あなたの仕事のカレンダーが一年じゅうあなたに使ってきたのと、同じ仕組みです。
ここで、この工夫はただの事務作業ではなくなり、値打ちのあるものに変わります。木曜のランニングは、Marcusと走る木曜のランニングになる。両親との月に一度の電話は、向こうも知っている決まった日になる。姪に約束した一時間には、その子の名前と、何をするかが書き込まれる。責任感を演出しているのではありません。ひとりぶんの意志を、人に対する小さな約束に変えているのです。そして人は、その約束をちゃんと守ります。
しかもこれは、双方向に効きます。そこが見逃せないところ。誰かにとっての「いつもの約束」でいることは、その人のためにできる、いちばん安上がりで役に立つことのひとつです。あなたが続けられているのは、相手が続けられるように守った、その副産物として生まれます。そして一年ずっとあなたを頼りにしてきた人との関係は、わざわざ別に予定を組まなくても育っていたものなのです。
キャリアの裏側にある人生を、年に一度どう振り返るか
仕事について尋ねるのと同じ三つの問いを、年に一度、書きながら、九十分ほどかけて自分に投げかけます。今年、よくなったことは何か。何に「はい」と言いつづけて、それは実らなかったか。来年、変えるものをひとつ挙げるなら何か。
仕事版と同じ週末にやってください。「同じだけの席を渡す」とは、つまりそういうことだからです。頭の中で考えるのではなく、答えを書き出す。ページに日付を入れる。閉じる前に、来年の日付をカレンダーに入れておく。それから、ひとつだけ確かめます。これからの一年の中に、答えに出てきた人たちが、名前つきで、実際の枠として入っているか。入っていないなら、その計画はただの気分です。
アクセルは、そのままでいい
ここには、働く量を減らせという話はひとつもありません。キャリアはこれまでどおり、カレンダーも、振り返りの周期も、計画も、その熱量も持ちつづけます。むしろ、思いきり飛ばしやすくなるはずです。人を壊してしまう種類の野心とは、ほかのすべてだけが交渉可能になっている、あの状態のことなのですから。
週に2時間半のトレーニング、名前のついた四つの約束、そして年に一度の九十分。これは、小さくなった人生ではありません。同じ人生の、もう半分が鉛筆ではなくインクで書かれている、それだけのちがいです。一年を、印刷してみてください。そして、鉛筆書きを探してみてください。
出典
- International Journal of Environmental Research and Public Health, The Effectiveness of Planning Interventions for Improving Physical Activity in the General Population: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
- Management Science, Holding the Hunger Games Hostage at the Gym: An Evaluation of Temptation Bundling
- World Health Organization, Physical activity