ちょっとしたヒント
- いちばん詰まった日を思い浮かべて、その日に合わせて習慣を決める。
- 最低ラインは上げない。それ以上はごほうびで、ノルマではありません。
- 一週間に二度できなければ、間違っているのは大きさで、あなたではありません。
日曜日の午後、カレンダーを開いて、コーヒーはまだ温かい。いい計画が書かれるのはこの時間で、そしてほとんどの計画がたった一つの致命的な欠点を抱え込むのも、この時間です。計画を立てている人には時間も体力も澄んだ頭もあって、木曜日にそれを実行する人には、そのどれもないからです。
望むものを小さくする話ではありません。目標は置いたところに、そのまま置いておいてください。変えるべきなのは一日分の大きさで、正しい大きさは、今日に収まる量ではなく、今月のいちばんつらい日に収まる量です。
妥協のように聞こえますが、まったく逆です。調子のいい日は、はじめから危なくありませんでした。すべてが決まるのは調子の悪い日のほうです。これが「いまやっていること」になるのか「昔やっていたこと」になるのかは、その日たちが決めます。その日に合わせて設計すれば、両方が手に入ります。高い目標と、現実の一週間を生きのびる一日分と。
新しい習慣は、どれくらいの大きさがいいのか
その月のいちばん詰まった日の中に収まるくらい、小さく。そこに合わせて決めれば、10日のうち9日はできます。そして頻度こそが、ある行動をひとりでに続くものへ変える変数です。
たいていの計画は、空想のカレンダーに合わせて作られています。電車は遅れず、誰もあなたの夜に会議をねじ込まず、子どもも熱を出さないカレンダー。そんなものは存在しませんし、それに合わせた計画は、なんでもない火曜日に崩れます。そのあと人は、その失敗を意志の弱さだと読み取ります。それは診断が違っていて、違う直し方に連れていきます。
小さくする理由はもう一つあって、そちらは気分とは関係ありません。British Journal of General Practice にまとめられた習慣形成の研究では、毎日続けた場合、自動化は平均しておよそ66日あたりで頭打ちになること、そして単純な行動のほうが複雑な行動より早く自動になることがわかっています。つまり小さい一日分は、ただ終わらせやすいだけではありません。もう決めなくていい地点に、大きい一日分より早くたどり着きます。日曜日に立派なものを設計した人より先に、あなたは習慣の自動版に到着するということです。
正しい大きさはどう見つけるのか
いちばん忙しい日のテストをしてみてください。この一か月でいちばん詰まっていた日を一時間ずつ思い出して、ほかの何もキャンセルせずにその中へ収まったのは習慣のどの版だったか、と考えます。
三つの手順でやって、答えを書き出してください。
- その日に名前をつける。 実際にあった本物の一日で、平均的な一日ではありません。平均的な一日は作り話です。
- すき間を見つける。 その日のどこに、ほんとうに10分か15分の空きがありましたか。家じゅうが起きる前、会議と会議のあいだ、子どもを学校へ送り届けたすぐあと。
- 一日分をそのすき間の大きさにして、そこから20パーセント減らす。 書いているその日には、最低ラインが少し簡単すぎるくらいに感じるはずです。その余白が、思い出したいちばんひどい日よりさらにひどかった日の分を払ってくれます。
最低ラインは設計そのもので、予備のプランではありません。この違いは、聞こえる以上に大きいです。予備のプランは、うまくいかなかったときに落ちていく場所なので、使うたびに小さな失敗の感触がついてきます。設計は、それがそもそも何であるかということです。あなたは最低ラインをやるのであって、それを超えた分はすべて、自分で選んだおまけです。
小さくすることは、目標を下げることなのか
違います。目標は少しも動きません。いちばんひどい日に合わせるのは一日分の大きさだけです。続くかどうかが実際に決まるのは、ひどい日のほうだからです。
数字にすると、話がはっきりします。週4回、5キロを3週間走って、そこでやめた人は、合計60キロです。最低ラインが15分で、たいていの週はそれを超えて、悪い週も手放さない人は、3月までにそれよりずっと多く走っていて、6月にもまだ走っています。この比較のどちらも、望みが小さかったわけではありません。片方が、自分がほんとうに持っているカレンダーに合わせて設計しただけです。
だから最低ラインは上限でもありません。調子のいい朝には、まるごとの版をやることになるし、やっていいのです。最低ラインがあるのは、調子のいい朝だけが数えられる朝にならないようにするためです。
最低ラインが簡単すぎると感じたら
たぶんそれが正しい大きさで、そしてあなたはいつでも好きな日にそれを超えていいのです。最低ラインは、必ずここまではやると約束する量であって、実際にこれくらいやるだろうという予測ではありません。
ここでの落とし穴は、調子のいい週です。強い回が三度続いて、最低ラインがばかばかしく見えてきて、あなたはそっとそれを上げます。二週間後につらい時期が来て、上げた最低ラインはもうその中に収まらず、習慣は止まります。最低ラインが、いい週を理由に上がることは決してありません。ほんとうに大変な一か月を、一度も欠かさずやり切ったあとで、そのときだけ、一度、少しだけ上げてください。
二つの大きさを並べて書いておいてください。まるごとの版と、最低ラインの版。二列、一枚のカード、ひと目。道具はそれだけです。そしてそれが、夜10時に行き当たりばったりで考えることと、書かれた指示を読むことの違いになります。
小さい版に、ほんとうに意味はあるのか
あります。しかもこれは気持ちの話ではなく、測れる話です。Primary Care Companion to The Journal of Clinical Psychiatry に載ったレビューは、中くらいの強さの運動を週3日、30分行えば心の健康への効果には十分であり、しかも続けて行う必要はないと述べています。10分の散歩3回が、30分の散歩1回と同じ働きをするからです。
同じ理屈は運動の外でも通じます。仕事のある日に毎日15分書けば、一年で50時間を超えます。語学を10分、一年続ければ、2月にやめてしまった6週間の全力疾走よりずっと遠くまで連れていってくれます。小さい一日分は静かに積み上がり、あなたが最高の状態であることを求めません。だからこそ、最高の状態ではない月にも働きつづけます。
いちばん重い週に現れる利点が、もう一つあります。いちばんひどい日に合わせた最低ラインなら、計画があなたに習慣と仕事のどちらかを選ばせることは決してありません。両方の中に収まるので、何かを犠牲にする必要も、うまく交渉できないその瞬間に何かを交渉し直す必要もありません。
二つの大きさを、週が始まる前に書いておく
日曜日に書いた計画を出して、その隣に二列目を足してください。左にまるごとの版、右に最低ラインの版。疲れた人が何も考えずにたどれるくらい、具体的に。そして一週間は右の列で走らせて、左にあるものは全部、受け取っていいごほうびとして扱ってください。
Nature に発表された大規模なジムのメガスタディでは、6万人を超える人が54種類の4週間プログラムに参加しました。そのうち45パーセントのプログラムは、実施中は週あたりのジム通いを増やしました。けれども、4週間が終わったあとも測れる変化を生んだのは8パーセントだけでした。計画を一か月動かすのは簡単なほうです。9週目にもまだ動いているかどうかを決めるのは、大きさです。
目標はいまある場所に、そのまま置いておいてください。高いところを狙って、大変なほうに申し込んで、何を目指しているのか人に話してください。そのうえで、一日分の大きさをその月のいちばんひどい木曜日に合わせてください。自分の最高の日に合わせて設計した人たちが新しい計画に移っていったあとも、あなたはまだそれを続けているはずです。
出典
- British Journal of General Practice, Making health habitual: the psychology of 'habit-formation' and general practice
- Primary Care Companion to The Journal of Clinical Psychiatry, Exercise for Mental Health
- Nature, Megastudies improve the impact of applied behavioural science