ちょっとしたヒント
- 5つの要素を記録:睡眠、練習、食事、ウォームアップ、最初の一手。
- 効いていた2つを残して、あとは手放す。
- 底を上げれば、山は自然に高くなる。
うまくいった日がありました。まぐれでうまくいったのではなく、本当にうまくいった日です。頭は冴えていて、間合いは崩れず、いちばん難しいところは気づかないうちに過ぎていて、終わったときには、自分の力の上のほうを出せたとわかっていました。ところが、何をいつもと変えたのかと聞かれると、言葉が出てきません。まるで天気のようでした。
天気ではありませんでした。ああいう日の裏には、いくつかの要素があります。しかもその要素は、その日そのものよりずっと地味で、ずっとはっきり知ることができます。睡眠、練習、食事、ウォームアップ、最初の一手。この5つを、その日の記憶が新しいうちに書きとめてください。何週間か、ふつうの日にも続けてみてください。すると、あとから意図して再現できる形が見えてきます。方法はこれだけです。そして本当の見返りは、いい日をもう一度出せることではありません。そこから先、あなたが出すすべての本番の下で、底が上がっていくことです。
うまくいった本番を、もう一度出すには?
その裏にあった5つの要素を、まだ覚えているうちに書きとめてください。睡眠、練習、食事、ウォームアップ、そして最初の一手です。いい日は、その要素がどれだけわかるかの分だけ繰り返せます。そして要素は、内側から感じるよりずっとよくわかるものです。
具体的に書きます。「よく眠れた」ではなく、7時間半、11時にはベッドへ。「練習した」ではなく、火曜は筋トレ、水曜は休み。「ちゃんと食べた」ではなく、朝食は8時、昼は1時にきちんと。ウォームアップは、直前の1時間に実際にやったこと。最初の一手は、いちばん最初に選んだそのものです。最初の90秒が、そのあとすべての調子を決めるからです。
どう感じたかは書かないでください。感じたことは、これから説明したい結果のほうです。それを原因と同じ欄に入れてしまうと、この作業はただの日記に変わります。5行、90秒、その日のうちに。
実際には何を、どのくらいの期間書けばいい?
大きな日だけでなく、ふつうの日にも同じ5行を、だいたい6週間。記録の中には、平均的な日も、うまくいかなかった日も必要です。いちばんいい本番だけが並んだ記録は、何がそれをいちばんにしたのかを教えてくれません。
6週間は、科学的な数字ではなく、実際的な長さです。ふつうの日も悪い日も両方出てくるくらいには長く、それがあってはじめて比べられます。そして、最後までやりきれるくらいには短い。手間のかからない場所に置いてください。メモアプリでも、手帳の後ろのページでも、表計算の1行でも。
ここでの記録は、事務作業ではなく、それ自体が効いています。138件のランダム化実験のメタ分析では、目標に向かう進み具合を確認するようにうながされた人のほうが、その目標を達成しやすく、しかもその情報を実際に書きとめたり誰かに伝えたりしたときのほうが、効果は大きいことがわかりました。つまり記録は、練習のまわりにある雑務ではありません。練習の一部です。
どの要素が本当に効いていたのか、どう見分ける?
いちばんよかった3日と、いちばん悪かった3日を並べて、毎回同じ方向に動いている要素を探してください。たいていは5つのうち2つがそうで、残りは気にせず手放していい雑音です。
ほとんどの人にとって、その2つのうちの1つは睡眠です。大学のバスケットボール選手が数週間にわたって夜の睡眠を延ばしたところ、スプリントのタイムもシュートの正確さも、どちらも良くなりました。そして大人は一般に、注意力と反応の速さを支える働きのために、一晩に7時間以上を必要とします。いちばんいい日が、いちばん長く眠った夜のあとに来ているなら、最初のてこはもう見つかっています。しかも、少しも不思議なものではありません。
2つめは、たいてい自分では思いつかなかったほうです。昼をどれくらい食べたか、前の日に体を動かしたか、始める前に10分ひとりの時間があったか。平均ではなく、差の大きさで探してください。つまり、いちばんいい3日といちばん悪い3日のあいだで、いちばんはっきり違っている要素です。自分がいちばん強い意見を持っている要素ではありません。見つかったら、短い一文のルールにして書いておきます。本当に守る2つのルールは、一度読んで放り出した9項目のリストに勝ちます。
いい日が繰り返せなかったときは?
やり方を書き直す前に、まず要素を確かめてください。短い夜が2回と、抜けた昼食。それだけで、思っている以上の部分が説明できます。5回のうち4回うまくいくルールは、壊れたルールではなく、働いているルールです。
本番は決まったとおりには進まないし、記録は機械ではありません。5行が買ってくれるのは、容疑者の少ないリストです。調子が上がらない日に、5時間しか眠っていない、ウォームアップも飛ばした、と目で見えるなら、謎と気分のかわりに、説明と直しかたが手に入ります。要素がすべてそろっていたのに、それでも上がらなかったのなら、それも役に立ちます。ばらつきが、自分の見ていなかったところにあるということだからです。たいていは会場か、そこにいたほかの人か、自分に決める権利がまったくなかった何かです。
がっかりした1日のために、6つめの要素を足さないでください。記録は、面倒になった瞬間に働かなくなります。行が増えるほど、いつのまにか書かなくなる可能性が上がります。2つのルールには、作り直す前に1か月ください。
効いていた2つを、どうやって続ける?
やろうという気持ちにではなく、すでに決まった時間に起きている何かに、1つずつくっつけてください。同じ状況での繰り返しが、決断をふつうの初期設定に変えます。そして正直な目安は、数週間から数か月です。
よく言われる数字は21日ですが、これは俗説です。もとをたどると、新しい顔つきに慣れていく患者についての、ある外科医の観察であって、習慣の研究ではありません。研究者が実際に日々の行動を追いかけたとき、自動でやっている感覚は上がっていって、平均でおよそ66日たったあたりで頭打ちになりました。人によっても行動によっても、幅はとても大きいものでした。同じ研究では、1日抜かしても誰も目立って後戻りはしなかったことがわかっています。持って帰る価値があるのは、そこです。
だから、もっと眠ろうと決心するのはやめましょう。歯をみがくときに、スマホを棚に置く。ウォームアップをしようと決心するのもやめましょう。車を停めたらそのまま、静かな10分をとる。毎回、必ず。ないと気になるようになるまで。きっかけのほうが覚えていてくれるので、あなたが覚えていなくてよくなります。
最初の2週間は骨が折れるはずです。そして、それは薄れていきます。その薄れていくことこそが、習慣のすべてです。一度だけ決まった代金を払って、そのあとずっと戻ってくる、あなたの余力なのですから。
底が上がっていくから、もっと高く狙える
山の高さはわくわくしますが、その多くは自分の手の外にあります。底はちがいます。底を上げるというのは、ふつうの日が、かつて特別だと思った日に近づいていくということです。そのあとで天井が動くとき、天井はより高いところから動きます。きつい速さが、いい1年ひとつで終わらずに長い道のりに変わるのは、こうしてです。
自分の5つの要素が本物かどうかを、手早く知る方法があります。今月カレンダーに本番の日が入っている人に渡して、何が起きるかを見ることです。人に教えることは、それをもう一度学び直すやり方です。声に出して説明できないところが、まだ勘でやっていたところで、質問してくれる人は、ひとりでもう1か月練習するより早くそこを見つけます。あなたは試されたやり方を手に入れ、相手は味方をひとり手に入れます。そして次にその場へ入っていくのが自分の番になったとき、それが本番で持ちこたえることを、もう知っています。
出典
- PubMed, 目標への進み具合を確認することは達成を後押しするのか:実験的証拠のメタ分析
- PubMed, 睡眠を延ばすことが大学バスケットボール選手の競技成績に与える影響
- PubMed, 健康を習慣にする:「習慣形成」の心理学と一般診療
- National Heart, Lung, and Blood Institute, 睡眠はどれくらい必要か