ちょっとしたヒント
- 結果に利害のない人を、ひとりだけ選ぶ。
- 守らされる約束ではなく、方向として言う。
- その人にできる具体的なことを、ひとつ渡す。
あなたは、自分でも本気で信じているものに取り組んでいます。それは本物の目標で、それなりの時間をかけてきたし、近くで見ている人がちゃんと真に受けるくらいには、いい仕事になっています。
それなのに、最近なにをやっているのと聞かれて、自分の口から「いや、まあ、いろいろと」と出てくるのを聞いてしまい、帰り道のあいだずっと自分に腹を立てていた。
それは自信の問題ではありません。少なくとも、先に直さないといけない問題ではない。言い方の問題です。大きな目標について口をつぐんでしまう人の多くは、目標そのものが怖いわけではありません。怖いのは、その一文のほうです。こういうことを言うときの言い方として教わってきたやり方は、これから三年間、親戚が集まるたびに進み具合を確かめられる約束のように響くからです。一文を変えれば、怖さの大半はそれと一緒に出ていきます。あとに残るのは、初対面の人にも身をすくめずに言えるかたちです。
偉そうに聞こえずに目標を伝えるには?
約束ではなく、方向として言いましょう。「自分のスタジオを持つほうに向かっています」なら、誰かに責任を問われるような主張にはなりません。一方で「二年以内に自分のスタジオを持ちます」は、その場に日付を手渡してしまい、これから先の会話をぜんぶ進捗確認の場に変えてしまいます。
うまくいく一文は三つの部分でできていて、六秒くらいで終わります。動きとして言う方向。いま踏んでいる一歩。これは具体的でささやかで、その方向が本物だと示してくれます。そして小さなお願い。これがあることで、告知が会話に変わります。「自分のスタジオを持つほうに向かっています。いまは副業で自分のお客さんを二人みています。ブランドまわりの仕事で困っている人がいたら、こちらに回してください。」
そこで効いているものに注目してください。偉そうかどうかは、目標の大きさから読み取られるのではありません。主張の言い切りかたから読み取られます。方向を偉そうだと感じた人は、いまだかつて一人もいません。人が身構えるのは、真ん中の面倒な部分がもう済んだかのように結果を宣言する人に対してです。
目標を口に出すと、かえって達成できなくなる?
自分はこういう人間だと名乗ると、そうなることがあります。進み具合を報告する場合は、逆のことが起きます。Peter Gollwitzer たちの研究では、自分が何者かに関わる意図は、それを他の人に気づかれていた場合のほうが、誰にも気づかれなかった場合よりも熱心に実行されませんでした。認めてもらえたことで、もうそれになったという感覚を早すぎるタイミングで受け取ってしまったから、のようです。
目標は絶対に人に言うな、と言われたことがあるとしたら、その根拠はこの研究です。ただ、その助言はおおざっぱすぎます。この結果が指しているのは、名乗りのほうです。感心してくれる人たちの前で「私は小説家です」と言えば、一ページも書かないまま、小説家である感じだけ受け取れてしまう。しかもその効果は、その肩書きにいちばん強く思い入れのある人でもっとも大きかった。これは正直、居心地の悪い細部です。
進み具合の報告は、まったく別のふるまいをします。目標のモニタリングについての最大の総説、Harkin たちによる 138 件の研究と 20,000 人弱の参加者を対象にしたメタ分析では、自分の進み具合を確かめるようにうながされた人のほうが、目標に届く確率が上がっていました。しかもその効果は、進み具合を誰かに報告し、紙などに記録したときのほうが強くなりました。この二つから落ちてくる実用的なルールはこうです。名乗りは減らして、数字を増やす。「いま 30,000 語まで来ていて、三月までに草稿を終わらせるつもりです」は報告です。「私は小説家です」は衣装です。
最初に誰に話せばいい?
あなたがそれを手に入れるかどうかで、得も損もしない人をひとり。上司でもなく、一緒に暮らしているわけでもなく、あなたと張り合ってもいない人は、その目標を約束や脅しとしてではなく、ただの情報として聞いてくれます。そして、最初の一回こそ、うまくいってほしい一回です。
そのあとには、はしごがあります。順番どおりに上がる価値があります。まずは利害のない人。反応がきれいで、あなたにはきれいな一回が必要だからです。次に、実際に影響を受ける人たち。この人たちに必要なのは、ビジョンよりも日付と、現実にどうなるかのほうです。そしてずっとあとで、しかも役に立つときにだけ、それをあなたが何者かについての主張として読む人たち。
最後のグループにいきなり飛ぶのが、人がやけどをするやり方です。声に出して四回言う前に大勢へ向けて発表された目標は、盛りすぎたかたちで出てきます。まだ、そっけないくらい素直な言い方が見つかっていないからです。
言う練習をするいちばん簡単な方法は?
まず、自分ではなく誰かの目標を、それについて動ける人に向かって声に出してみてください。自分のために使う一週間前に、まったく同じ文があなたの口に入ります。しかも、もともと払っていないものは何も払わずに済みます。
人の目標のほうが、自分の目標より楽に口に出せます。そして、そのほうが強く推せます。だから、それをわざと使いましょう。仕事ぶりを本当に知っている人を選んでください。その人が何が得意で、どこへ向かおうとしているのかを名指しで伝え、それを実際に動かせる立場の人に言う。「Ana はこれまで一緒に働いた中でいちばんのデータの人で、いまは不正対策のほうに移ろうとしています。会ってみてください。」二十二語、部屋がひとつ、それだけで彼女の一年が変わります。
これがあなたにしてくれるのは、感情の問題をおつかいに取り替えることです。見られることへの自分の気持ちを扱うかわりに、成功の条件がはっきりした小さな用事がひとつある。そして鍛えている筋肉はまったく同じです。助けてくれるかもしれない人に向かって、まじめな野心をふつうの言葉で名指しする、という筋肉です。
KEEP CALM の創業者は、まさにこのやり方を、行きたい場所まで自分を運んでくれたもののひとつとして語っています。着いたあとで始めた習慣としてではありません。本人の言葉によれば、自分の周りにいる人を教え、育て、助言し、引き上げ、ほめ、味方として推す機会をいつも探していて、返ってきたものは自分が入れたものの十倍だった、と言います。これは彼自身のキャリアについての彼の話であり、世界がどう帳尻を合わせるかという法則としてではなく、彼の経験として差し出されています。
その人には何をお願いすればいい?
今月のうちにできる、具体的なことをひとつお願いしてください。「不正対策のあたりで人を探しているところ、知りませんか」は、「何か聞いたら教えてください」より効きます。輪郭のあるお願いは、相手が実際にやり終えられて、そのあと気分よくなれるお願いだからです。
お願いのかたちは三つでほぼ足ります。こういう人、と決めた相手をひとり紹介してもらう。仕事をひとつ、十五分だけ見てもらう。そのとき、答えてほしい問いも一緒に添える。あるいは、その人の専門なら答えられて、自分ひとりなら一週間かかる問いをひとつ聞く。三つとも小さくて、三つとも終わらせられて、三つとも、役割を引き受けさせずに相手が役に立てる道をつくります。
そして同じ息のうちに、逃げ道も渡してください。「思いつかなければ、まったく気にしないでください。」これはあなたから何も減らさないのに、次のお願いにうんと言いにくくさせる気まずさを取り除いてくれます。そしてこれが、頼みごとと義務のちがいです。
四回目には、ただの事実になる
この一文は、すぐに楽になります。あなたが別の種類の人間になるからではありません。繰り返しが、そこから演技を抜いてくれるから楽になるのです。一回目は出来事です。四回目は、火曜日に自分が何をしているかの説明です。もともと、それ以上である必要はありませんでした。
だから、利害のない人をひとり選んでください。方向として言ってください。今月のうちにできることを、ひとつ渡してください。そのあとで、誰かの目標も声に出してみてください。そちらはあなたから何も減らさず、自分のぶんを言いやすくしてくれて、二人とも、ひとりでいるより遠くまで行けます。