ちょっとしたヒント
- 別口座、カードなし、ホーム画面にショートカットなし。
- まずは固定費の一か月分。三か月分はそのあとで。
- 給料日の翌日に自動送金を設定。
友だちが何気なく緊急資金の話をして、あなたは気づきます。貯めようという気持ちははっきりあるのに、最初の目標がいくらなのかはまったく見当がついていない、と。そこに立っているのは悪くない場所です。この問いにはちゃんと答えがあって、しかもその答えは、あなたがずっと避けてきたものよりずっと小さいからです。
たいていのアドバイスは生活費の三か月から六か月分から始まります。いずれは正しいけれど、今日の役には立ちません。ゼロから見れば三か月は目標ではなく壁で、たどり着く姿を思い描けない目標は、五週目あたりで静かに入金が止まる目標です。だから最初の目標は、固定費の一か月分。カードを持たない別口座に置きます。この記事で扱うのは、いくらなのか、どの口座なのか、意志の力に頼らずにお金をそこへ届ける方法、そして本当は何のためのものなのか。最後のひとつは、ほとんど誰も説明してくれない部分です。
最初の緊急資金はいくらあればいい?
固定費の一か月分です。収入の一か月分ではなく、先月使ったお金すべての一か月分でもありません。住居費、光熱費、保険、交通費、借入の最低返済額、そしてふだんの食費。これを一度だけ足し合わせます。
この金額は、たいてい思っているよりかなり小さくなります。固定費は使っているお金の一部にすぎないからで、小さいことこそが狙いです。給料日ごとに無理のない額を貯める人なら、多くの場合は一年以内に手が届きますし、そこに届くこと自体が、仕組みが動いている証拠になります。Consumer Financial Protection Bureau(アメリカの消費者金融保護局)は、まさにこの理由で万人共通の数字を出すことを避け、自分自身のこれまでの予想外の出費に合わせて目標を決めるように勧めています。どんな目安の公式よりも、こちらのほうがいい指示です。
その金額は、考えではなく具体的な数字として書き留めてください。二千二百のクッションは目標です。数か月分の生活費くらいのクッションは願いごとです。
どの口座に置けばいい?
銀行か信用組合の、別の貯蓄口座です。カードはひもづけず、スマホのホーム画面にショートカットも置きません。この面倒くささは飾りではなく、設計そのものです。
条件は三つ、それ以上はありません。お金が安全であること。つまり保護された預金で、必要になったその週に値下がりしうるものには入れないこと。一日か二日で引き出せること。つらい週に手が届かないクッションはクッションではないからです。そして、ふだん使うお金と切り離されていること。普通預金に置いたままのお金は、何の決断もされないまま、ごく普通の木曜日に消えていくからです。
利息はうれしいおまけであって、本題ではありません。固定費の一か月分では、ほとんど増えません。わずかに高い金利を追いかけることこそ、人をもう一年ゼロのまま留めておく類の最適化です。今週のうちに口座を開ける金融機関で開いてください。気が向いたら、あとで移せばいいのです。
銀行が許すなら、口座に素っ気なくて具体的な名前をつけてください。「クッション」と名づけられた残高は、同じ残高に「貯金」とだけ書いてある場合より、金曜の夜に崩すのがはっきり難しくなります。名前が、そうでなければ自分と言い争うことになる問いに、先に答えてくれるからです。
お金を実際にそこへ届けるには?
給料日の翌日に自動送金を一本設定します。前日には絶対にしません。設定したら、あとは触らないこと。Consumer Financial Protection Bureau は、普通預金から貯蓄口座への定期的な送金を、貯める習慣を続けるいちばん簡単な方法のひとつだと呼んでいます。個人の家計の中で、手間に対する効果がいちばん大きい変更がこれひとつです。
金額よりも、給料日の翌日であることのほうが大事です。口座を見る前に動いたお金は、あなたが何かを感じる機会をそもそも持たなかったお金で、送金を止めるのはその感情のほうです。心底つまらないと思える額から始めてください。給料日ごとに二十五がつまらなくて、二百が怖いなら、二十五から始めましょう。一年生き延びた小さな送金は、三月に解約される大きな送金に勝ちます。
加速したいなら、二つあります。給料が上がった日に送金額を上げること。支出が先に動く前に、です。そして、不規則に入ってきたお金は届いたその足でそこへ送ること。還付金、ボーナス、立替の精算。毎月のリズムにもともとなかったもので、なくなっても困らないお金です。
クッションは本当は何のためにある?
あなたに決める余地を買ってくれるためです。クッションは不意の出来事そのものを止めはしません。その出来事が、夜十一時にクレジットカードを手にして下す決断に変わるのを止めます。
見返りはそれがすべてで、その口座がこの先払うどんな利息よりもずっと価値があります。一か月分が入っていれば、車の修理は買い物です。なければ、同じ修理が借金になり、手数料になり、どこか別の支払いの遅れになり、本当の仕事に必要だったはずの注意力が三週間ぶつ切りになります。Consumer Financial Protection Bureau の緊急貯蓄に関する調査は、貯蓄の水準が違う世帯のあいだで、信用情報、負債、金銭的な義務を果たせるかどうか、そして経済的な満たされ具合に、はっきりした差があることを見つけました。Federal Reserve(アメリカの連邦準備制度)の家計に関する年次調査も、まさにそうした危うさを追うために存在しています。
クッションは、誰かを助けたいと思うことと、実際に助けられることの差でもあります。固定費の一か月分があれば、友だちの航空券を出したり、誰かの机からそっと請求書を一枚引き取ったりしても、それが翌週の自分の緊急事態にはなりません。
一か月から三か月へは、いつ進む?
その一か月分が、まるまる一四半期のあいだ手つかずでそこにあって、送金に意志の力が一度も要らなかったとき。それが仕組みが回っているという合図で、そのときはじめて、もっと大きな目標が願いではなく計画になります。
そのあとは、がんばりではなく目標のほうを上げます。三か月分が標準的な次の一歩で、収入に波がある人、自分で仕事をしている人、家の中で稼ぎ手があなただけの人なら、六か月分が理にかなっています。同じ口座、同じ送金日、カードについての同じルールはそのままに。やり方は何ひとつ変わりません。変わるのはゴールラインだけです。
ひとつだけ、やらないでほしいこと。最初の一か月分ができる前に投資を始めないでください。長い目で見て投資が危ないからではありません。備えがないと、最初の不意の出費は、その週にたまたま市場が出している値段で何かを売って払うことになるからです。よい長期の判断が、悪い短期の判断に変わるのはこうしてです。
クッションは、すでに済ませてある決断
この話が、ただ貯めることではなく、もっと稼ぐことについての区分に入っているのは、クッションこそが、選べる人としてふるまうことを許してくれるからです。もっといい話を待てます。支払いが遅い取引先に断れます。払ってくれる以上に自分から奪っていく仕事を、辞められます。次の予想外の請求が緊急事態になってしまう人には、どれひとつ選べません。そしてそのどれもが、残高そのものよりずっと価値があります。
だから今週、金額を決めて、口座を開いて、給料日の翌日に送金をひとつ設定してください。固定費の一か月分です。思っているより小さくて、あなたがこの先買えるいちばん安い度胸です。
出典
- Consumer Financial Protection Bureau, 緊急資金をつくるための基本ガイド
- Consumer Financial Protection Bureau, 緊急貯蓄と経済的な安心:Making Ends Meet 調査と消費者信用パネルからの知見
- Federal Reserve Board, 家計の経済状況と意思決定に関する調査